Posted on 2015/06/09
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学園祭前夜の名古屋大学にて開催された心理学研究会NPCに主催のお一人である中京大学池田先生にお招きいただき、オーディエンスとして参加してまいりました。大変楽しい刺激的なお話を聞かせていただくことができました。2回に別けてレポートいたします。
今回のテーマは「神様の発見」です。
とても怪しく非/超科学的なトピックに見えるのは、報告者である私が端折りすぎているためであり、大変挑戦的でまじめな研究会でありました。また、ロボット開発の当ブログと接点がなさそうなお話ですが、こちらの投稿にあるようにロボット操縦者/見物者に起こる不思議体験に通じているかもしれません。
本レポートは、これまでの投稿と比較にならないほど科学的専門性に富んだ内容になります。本業はWEB/IT、ロボット開発広報担当の私にとっては、大きな誤解を覚悟して公開しなければなりません。そしてまた当ブログの目的の1つに、ロボット開発の敷居を下げるというミッションがあります。そこで中学生の息子には、きっとわかるであろう平易なレポートをする所存です。どうか関係者の皆様、過不足間違いがあればご指摘いただけますと幸いでございます。
さて、本題にはいります。
研究会の話題提供者はヒデマンこと大阪大学 高橋秀之先生。「どうぞヒデマンと呼んで下さい」と自己紹介され、終始にこやかにお話される好人物でした。そのせいか難しいテーマでありながら、大変親しみをもってお話を聞くことができました。
ヒデマン先生を正確に紹介するには専門用語を並べることになります。肩書を言えば「大阪大学大学院 工学研究科 知能・機能創成工学専攻 創発ロボティクス研究室 特任助教」。とにかくすごいことをしている!とは思うものの理解しにくさ満載です。なのでとても簡単に紹介すると、ロボット博士であり脳やAIの研究者だと言ってしまいます。
そんなロボットと対極にあるような存在の「神様」になぜ興味をお持ちになったのか?それはもう少し普段の研究活動をご紹介せねばなりません。
ヒデマン先生はロボット/AIの研究者ですが、その中でも心理学,神経科学,情報科学を駆使してエイジェンシーの研究をなさっています。
エイジェンシーは残念ながらWikipediaには載っていませんでした。このことからも最先端の研究者であることが伺えますが、このエイジェンシーという概念を理解しないと話が進まないので、私が理解した(と思う)範囲で説明してみます。まず一般和訳の「代理」と意味はだいぶ違います。
これはたぶん。一言でいうと「ヒトらしさ」です。
例えばロボットが人らしく見えるにはどんなエイジェンシーが必要か、というような文脈で使います。
またモノをヒトらしく感じる現象をエージェンシーと言ったり、人は自分の気分や考えていることしかわからないはずなのに、相手の気持ちや考えを察し、それが共有されている様、関係を言ったりします。つまりエイジェンシーが解明されロボットやAIに適用されると人間らしさが宿るのだと思います。
例えば下の写真を見てどちらが人らしく見えるのか?
見た目は当然にロボットのほうが人らしくみえますが、ヒデマン先生の実験(リンク先は英語です)では特定コミュニケーション(コインを奪い合うゲーム)においてパソコンの方が人らしく見える場合があるとの結果を得たと言います。この場合、どちらの方がエイジェンシーに優れているかというより、それぞれに別のエイジェンシーが働いたと考えられたようです。
こうした、ヒトではないものに人らしさを感じる研究をいくつも繰り返しているうちに「神様」に対する人の意識に興味をお持ちになり、「かみさまをHAIの視点から捉える」に取り組まれております。まずはっきりさせておくべきは、この研究は神の実在証明ではありません。神を感じる脳のメカニズムを解明したいとお考えでいらっしゃいます。
ちなみにヒデマン先生は、過去の論文発表時、ある研究者の誤解から強烈な批判というか文句を受けたため神様は「かみさま」と表現しているそうです。ちょっとかわいくなるということなんでしょうか。
続きます。
神様の発見−心理学研究会の参加レポート その2