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神様の発見−心理学研究会の参加レポその2

Posted on 2015/06/09


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考えてみれば、あらゆる世界において神を持たない文明はないはずで、神を意識することで人の社会性は発達してきたのでしょう。現在の日本では無宗教な方が多いと思われますが、初詣やお葬式には行く人が大半ですし、たまには神頼みをしている日だってあるのではないでしょうか。ヒデマン先生はある自治体ではゴミの不法投棄が絶えなかった場所や立ち小便されてしまう街角に鳥居を設置したところ問題が改善したとの例をあげ、そうした社会に根付く「かみさま」の意識され方、共有のされ方の考察を続け、また別の文化圏で強く神の存在を大切にしている宗教からも研究の参考事例として、人の神の意識のされ方についてお話くださいました。


例えばケチャと呼ばれる呪術的な踊りだったり、イスラムの集団でお祈りする姿/動きだったりを参考にしつつ、そうして神を意識するメカニズムを理解する至ってシンプルな仮説を立てておられます。



それはすなわち、

神の認知あるいは共有の強化は、リズムの同調が大切な要素ではないか?

というものです。


たしかにチャチャチャとアップテンポな集団合唱が行われると、そこに神がかった何かがいるように感じますし、そうでなくても胸騒ぎはするし、圧倒される気持ちを否定できません。

さらに仮説の証明手段に類型実験も参考になされたそうです。
言葉の喋れない赤ちゃんが母親と見つめ合い同じリズムで体を揺らした場合と、そうでない場合を比較すると、同調している赤ちゃんに母親の意志が伝わるようになるそうです。赤ちゃんにとって言葉による明確な意思疎通は出来ないわけで、そこにエイジェンシーを活性化させる要素がリズム同調だったという発見に寄り添うならば、母親を(神様)として、赤ちゃんを(大人)として考えると、神様とリズム同調がおこれば、神の意志が感じれた!と考えてもおかしくはなさそうです。

しかし本実験は被験者はあかちゃんではなく大人です。
大人は容易にヒトの気持ちを察しますし、エイジェンシーが活性化したと言える現象を客観視しにくいとも言えるわけです。

そして何より、そもそも神をどうしたら意識できたとするんだ?という疑問が起こるのですが、そこでヒデマン先生はその解決案を提示します。それはパレイドリア効果というのだそうです。





このパレイドリア効果とは雲や壁のシミが顔に見えてしまう感覚のことで、誰しもが経験する錯覚です。誰がどうみても同じ顔にみえるパレイドリア効果もあれば、特定の人にしか見えないもの、意見がわかれる状態の物もあるもので、そこに注目したある実験ではヒトの認知力が落ちるとその感覚はより強化されるという報告があるそうです。


つまり、

リズムに同調するとパレイドリア効果が起こりやすくなる。

という仮説をたてたそうです。






そこでヒデマン先生は、まったく絵に見えない(と思える)ドット絵を用意します。
リズム同調した人とそうでない人で、何かが見えた人の数に違いが出たのだとすれば、それはパレイドリア効果が高まったのであり、そこに複数の人が同じようなビジョンが見えたのだとすれば、神が意識できたとする脳の働きに近いのではないか、とお考えになられているようです。

本当に面白いことを考える人がいるものだと思いました。

Shared Pareidolia 是非、見てみたいものです。
それが共有されるなら「神様の発見」と言ってもいいのかもしれません。なおヒデマン先生はこれを神様の発見とはおっしゃってませんでした。(言いたそうな気もしないでもないですが)言いたくなったのは報告者である私です。そのくらい面白かったのです。

こうしてランダムドット絵にパレイドリアを感知しやすくなる環境を作るために、リズム同調を発生させる実験機が生み出されました。太鼓を叩くロボットです。

実験機は2台。
人に同調して太鼓を叩くロボットと、まったくデタラメに叩くロボです。
これらに対し被験者は、なるべくロボと同調して太鼓を叩くことで、同調したときとそうでないときに別け、ドットを眺めて何が見えるかを計測するのだそうです。
現在はデータ取得/分析中だそうです。期待通りのデータが取れれば早速論文になるのだそうで、とっても楽しみです。


ここからはレポートではなく、感想。いや妄想。

ここまで書き進めてきて、やはり私に理解不足があると確信しました。
ヒデマン先生のお話を聞いた限りでは「同調した場合にパレイドリア効果がある」と解釈できたのですが、同調していない場合でも見えるのではないか?という気もするのです。あるいは両方のケースをご説明いただいていたのかもしれませんが…。

人はそこに何かあるよ、と言われれば、脳は無理やり錯覚を生み出すのだとすると、実験の太鼓ロボットにタブレットの頭部を用意して、そこにドット絵を表示。そうしておいてリズムが同調すると顔が見えるよと伝えるが、実際は何も見えない環境として実験をしてみるというのはどうなんでしょう。

同調すると顔が見えてくるならリズム同調は重要素だった。
同調しなくても顔が見えるなら、同調できないストレスによって、複雑化した脳の働きで錯覚が起こりやすくなった。いずれの場合でも顔が見えないなら、それでは困るので、また別のアプローチを考える。

もしよければタブレット頭部型ロボットを開発いたしますので、ヒデマン先生ご検討ください!

という妄想でした。


謝意!

ここに紹介させていただいたもの以外にも、いくつもの着想・論文のお話をいただくのですが、何しろいずれも専門的であり、そこにダイナミックなアイデアを付け加えたり、私が考えを整理する間もなく、ついにメモも追いつかず、ヒデマン先生の発表中も、他の研究者から質問が飛び、議論を交わし、その姿はある意味でスポーツのような、脳に汗を書くような刺激を覚えました。本当にお邪魔させて頂き皆様に感謝を申し上げます。



話題提供(敬称略)
大阪大学 高橋 秀之
同志社大学 伴 碧
名古屋工業大学 加藤 昇平
名古屋工業大学 小田 亮
名古屋大学 鈴木 敦命
中京大学  池田 功毅‎


文責
ダーレク開発メンバー 金田隆昭
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