Posted on 2016/12/08
さがみロボット産業特区 平成28年度「公募型ロボット実証実験支援事業」『遠隔操作ロボットの車椅子利用者による操作 実証実験』を実施しました。
日時:2016年12月1日(木)
場所:神奈川県産業技術センター内
モニター様:60代男性(車椅子利用歴約20年)
【調査内容】
- 操作性や疲労感などを検証するとともに、擬似外出感などについても定性的に調査
- コクピットの設計検証
【実験の流れ】
- 実験内容説明
- 操作説明
- 遠隔操作ロボット操縦
- アンケート
- 意見交換会
【実験結果】
基本操作はその場ですぐにご理解いただけました。ご自身で自由にロボットを走行させることができ、対峙した人と話すなどコミュニケーションをとることができました。またロボットによるジェスチャー表現(ロボットの手を振る、伸ばすなど)を行うことができましたが、腕を伸ばす動作などに難点を感じられていました。
その中で改善点もいただきました。
長時間利用を考えるとヘッドマウントディプレイ着用による目の疲れやVR酔いを軽減して欲しい。ヘッドマウントディスプレイから見える映像が今よりもハッキリ見えると没入感が得られるのではないか、視界も今よりも広く、見えているものの距離感がはっきりわかることで操縦がしやすくなり、外出感も感じられるのではないか、音声もデジタル音ではなく生っぽい音になるとより良いのではないか、とのご意見もいただきました。
コクピット設計の点で言えば、車椅子利用者の中には腹筋を動かせない人や、手首をうまく動かせない人、指先が器用に使えない人もいるので、今よりも単純な構造はどうだろうかとご提案いただきました。
アーム型マスタースレーブコントローラーの場合、両腕をあげての動作は腹筋を使うので、人によってはそれができないため片腕は必ずどこかを支えておく必要があり例えばアームは片側だけの仕様にするのはどうだろうか、コントローラー部分は電動車椅子のように長めのジョイスティックで土台が固定されている方がより使いやすいのではないか、ジョイスティックではなくボール型のコントローラーはどうだろうか、タッチパットの方が他の機能も追加できるのでいいかもしれないなど、車椅子利用者だからこそ感じる難点をもとに一緒に議論いただきました。
ロボットの足回りには、車椅子のタイヤのように大きめの円形のタイヤや半円球のボールなどを使用することで5cm程度の段差や溝は問題なくクリアできるのではないかというアイデアもいただきました。少しの段差をクリアできることで確実にロボットの使用環境は広がるので検討していきたいと思います。
また車椅子利用者ならではの“遠隔操作ロボットの未来へのお題”もいただきました。
車椅子利用者が困ることのひとつにものを落とした際にそれを拾うことができないということがあるそうです。「ロボットに床に落とした軽いもの(1kg以下の重さでいいから)を拾える手をつけて欲しい。」それは不便だったことが“できた”という感覚と、ロボットで他の車椅子利用者の困りごとを解決することができるといった側面も会話の中で感じられました。
「そしていつかは段差の上り下りをロボットがスムーズに行えたら、、、ロボットで山が登れたら、、、そんな経験ができたら、、、もちろん自身の体でそれを体験できるのが一番だけどね。」
と、とても大きなお題を頂戴し、実証実験を終了しました。
モニターとしてご参加いただいた方、実験会場をご提供いただいた神奈川県産業技術センターのみなさま、すべての調整・セッティングをしていただいた さがみロボット産業特区のみなさま、誠にありがとうございました。頂戴した改善点などは検討後、ロボットへフィードバックしていきたいと思います。
さがみロボット産業特区支援事業 実証実験は2017年も予定しています。
詳細・結果がわかりましたらこちらでご紹介させていただきます。
>さがみロボット産業特区
>神奈川県産業技術センター(EMCのテストなども行えます)